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札幌地方裁判所 昭和35年(わ)18号 判決 1960年8月10日

被告人 若山四郎 外二名

主文

被告人若山四郎を死刑に、

同白橋利春を無期懲役に、

同白橋保を懲役五年に、

それぞれ処する。

被告人白橋保の未決勾留日数中一二〇日を右本刑に算入する。

押収してある匕首一振(昭和三五年領第三三号の一)はこれを被告人白橋利春から没収する。

理由

(被告人らの経歴)

(1)  被告人若山四郎は本籍地において、兄二人姉一人四人兄弟の末子として生れ、父を二歳の時に失つたものの母や兄姉のもとで順調に生育し、演劇やスポーツ好きの少年として地元の倶知安農業高校を卒業し、その年の五月中旬頃より狩太町農業共済組合の技手として勤めたが、仕事が農家廻りの災害調査であつたので、自然に酒の味を覚え、加えて仕事自体にも熱が持てず、不面目な勤務を続けたため同組合を解雇されたが、田舎のこととて世間の口がうるさく、ついに外で職を探そうと決意して家をとび出し、クリーニング店外交員、製めん業店員、印刷所店員、塗装店見習工と転々と職を代え、右塗装店に勤めているとき、集金した店の金約一〇〇、〇〇〇円を横領したため、札幌地方裁判所岩見沢支部において懲役一年の実刑に処せられ、刑務所を出た後も二、三職を替えたがどれも永続きせず、ついに昭和三四年一月一六日頃より小樽の露店商渡辺利夫方に身を寄せたが、まもなく稼業にいや気がさしてやめ、昭和三四年一一月一六日より本件被害者の内縁の夫である山崎捨治方にトラツク助手として住込みで働いたが、翌月二〇日に臨時に入つた金一〇、〇〇〇円を懐に右山崎方を退職し、以後安宿を泊り歩き、映画、パチンコ等の日を過していたもの

(2)  被告人白橋利春は中学校卒業後、父の経営する鉄工場の鍛治工として働き、父の事業閉鎖後、炭礦礦外夫、各所の鉄工場鍛治工、木材人夫などと職場を転々とし、昭和三四年一二月二〇日頃より当時実兄である被告人白橋保のもとに寄食していたもの

(3)  被告人白橋保は中学校卒業後、父のもとで鉄工員の仕事を約四年続け、その後炭礦工作員、造材調査員、各所鉄工場の工員と職を移り昭和三四年九月一七日頃より札幌市豊平三条鷲田鉄工所の工員として働いていたもの

である。

(罪となるべき事実)

第一、被告人若山四郎は、前述の所持金が乏しくなるとともに、本気で職を探し始めたが適当な保証人がいないため、求人先では何れも断わられて半ば自暴自棄に陥り、自己の夜具下着も売り尽して、金銭に窮した結果、同被告人が旬日前まで働いていた札幌市南四条東四丁目山崎捨治方が昼間は同人の内妻松岡キミ(大正一一年三月一四日生)の外家人がなく、しかも集金した金を鞄の中へ入れて同女が保管していることを思い出し、同女を縛るか、絞めるかして暴行を加え、場合によつては殺害してでも、金品を強奪しようと考え、昭和三四年一二月二七日夜、偶々札幌市豊平二条二丁目飲食店「たまり屋」で知合つた被告人白橋保に殺害する意図の点は伏せてその余の右強取の計画を打ち明けたところ、乗気になつた同被告人は「家に弟がいるから相談しないか」と言つて、若山四郎を当時被告人白橋利春とともに住んでいた同市豊平三条一二丁目高橋アパートの自室に連れて行き、右アパートにおいて、被告人若山四郎と同白橋利春との間で、前記山崎方を襲い松岡キミを匕首(昭和三五年領第三三号の一)で脅した上、ロープで縛り上げ、万一騒がれたときには匕首で刺して傷害を加えてでも金品を強取するとの相談がまとまり、翌一二月二八日午前一〇時二〇分頃、被告人若山四郎は前記山崎方に赴き、松岡キミに対し「大事な書類を忘れたから取りに来た。奥さんも立会つて下さい」と言つて同女を同家地下の使用人寝室に誘い込み、いきなり同女の右手首を掴んで手前に引き寄せて、口を押えつけ同時に山崎方裏口に待機していた被告人白橋利春に合図をして呼び込み、共同して同女を押し倒してその頸部を締めつけた後、被告人若山四郎は持つていた刃渡り約一四糎の匕首(昭和三五年領第三三号の一)で同女の頸部を三回位、左大腿部を一回突き刺し、よつてまもなく、その場で、同女を右側頸部上後端部及び左大腿部刺創に基く失血死に至らせ殺害したうえ、前記山崎方二階居室より山崎捨治所有の男物オーバー二着、背広上衣二枚、モーニング上衣一枚、ズボン三本、毛糸スウエーター一枚、黒色布地二枚等衣類合計一一点及び現金約二四〇円その他印章、書類等雑品在中の手提鞄一個(以上価格合計二九、九〇〇円相当)を強取し

第二、被告人白橋保は同年一二月二七日夜、前記同人居室において、被告人若山四郎及び同白橋利春の両名が前記第一記載のごとく共謀のうえ強盗をなすに際し、これに使用するものであることを知りながら同人等に前記匕首一振を貸与しもつて前記若山等の犯行を容易ならしめてこれを幇助し

たものである。

(証拠の標目)(略)

(法令の適用)

被告人若山四郎、同白橋利春の判示第一の所為は各刑法第六〇条、第二四〇条後段に、被告人白橋保の判示第二の所為は同法第六二条第一項、第二四〇条後段にそれぞれ該当するところ、その量刑について按ずるに、被告人若山四郎については、自己の遊興費、生活費に窮するや、直ちに被害者宅を襲い、無防備の被害者松岡キミの頸部、大腿部をめつた突きにしたものでその方法は極めて残虐であり、而も被害者に何の恨みもないどころかかつて宿飯をともにした恩義さえ蒙つた元勤め先の女主人であり、白昼独りで家を預る主婦を狙つて周到に計画されてなされた犯行であつて、社会に与える影響は重大であるといわざるをえない。更に進んで被告人の性格をその経歴及び本件犯行を通じてみるにその反社会性は改善を期待し得べくもなく、被告人若山四郎に有利な諸事情を考慮しても、遺憾ながら所詮所定刑中死刑を選択せざるを得ない。

次に被告人白橋利春については、若山四郎より本件犯行の計画をきくや、遊興費欲しさから何ら躊躇することなく直ちに賛同の意を表し、現場において右若山四郎とともに貴重な生命を奪つていること、犯行後も格別改悛の情がみられないこと等責任は重いというべきであるが、本件犯行の始終を通じ若山四郎に比しやや従である点を考慮して被告人白橋利春については所定刑中無期懲役刑を選択して無期懲役に処することとする。

最後に被告人白橋保については本件犯行に供した匕首を貸与し、被害者の生命を奪う誘因をつくつたこと及び実弟である白橋利春に若山四郎を紹介して右利春をして本件犯行に至らしめたことなど不利な点もあるが、これまで前科なく、日頃の生活態度も割合真面目である事情を酌み、被告人白橋保につき所定刑中無期懲役刑を選択した上、刑法第六三条、第六八条第二号に則り法定の減軽をなし、更に前記情状に基き同法第六六条、第七一条、第六八条第三号により酌量減軽をなした刑期範囲内で同被告人を懲役五年に処することとし、刑法第二一条により被告人白橋保の未決勾留日数中一二〇日を右本刑に算入し押収してある匕首一振(昭和三五年領第三三号の一)は判示第一の犯行に供したものであつて、犯人白橋利春以外の者に属しないから同法第一九条第一項第二号、第二項によりこれを没収することとする。

なお、被告人若山四郎の国選弁護人に支給した訴訟費用については同被告人に負担能力がないこと明らかであるから、刑事訴訟法第一八一条第一項但書によりこれを負担させない。

以上の理由により主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木進 神崎敬直 今枝孟)

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